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モケレンベンベ・プロジェクト
by mokelembembe
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ポニョのうた

施設に預けられている子の里親になるのは難しいけど、時々遊ぶくらいならと児童相談所にボランティア登録したのは随分前、下町に戻って間もなくだった。
しばらく待っても何の要請も来なかったので、今度は救急の訓練なども実費で受け、近所の親子をサポートするボランティアに登録してみた。
しかしそちらも全くオファーが来ず、いつしか自分もそのことを忘れ、芝居やバイト、なぜか舞い込んだ老人施設での書道講師などで忙しく日々を送るようになっていた。
 
 ところが東日本大震災の年を境に、両方からチビッ子を預かって欲しいという連絡が次々入って来るようになった。な、何で急に!?などと考えている余裕もなく、公演の合間を縫って要請に応え、様々な理由でこの4年ほどの間に、何人ものチビッ子達を預かってきた。
 最初の子は、両親揃って友達の結婚式に出席する日だけ預けられた生後半年くらいの赤ちゃん。赤ちゃんの抱き方もだいぶ忘れてしまったので、ひたすら泣いているかと思ったら、絵本を読んであげると泣き止んで、ちゃんと聴いていたのでビックリ。そのことを両親に報告すると、後日「初めて預かって頂いたのが、あなたで良かった。」と手紙が届いた。
その親御さんの性格が特別良かったのかと思ったら、次に預かった子のママもわざわざお礼を届けてくれて「あなたに預かって頂けてラッキーでした。」とカードが添えてあり驚いた。

 かつて両親は、感受性の強すぎる私を「この娘は将来結婚できないだろう。」と思っていたそうである。ところがモノ好きな男がいて結婚でき、何とか息子を一人授かった。しかし兄弟を産んでやることは出来なかったし、やはり母性というものが足りないのだろうと思っていた。
それが、ダメ母ちゃんなりに育てた息子が案外いい人格に育ってくれたお陰で、子育てがそんなに向いていない訳ではないのか?と思えるようになった。そして他人を手助けする喜びを知り、元来ワガママな自分にも、出来ることで役に立てたらと考えられるようになったという、そんな程度。不安要素が増えた世の中で頑張っているステキなママ達に、逆に感心するばかりである。
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 老人施設の書道講師は4年間務めたが、路面電車の全国公演が決まった時、皆さんの筆を休ませてしまうのは悪いので他の方に代わってもらった。ここでの経験も、書道でボケの症状が軽減することなどを目にし、感動を色々もらった。最後は、皆さんが餞別を包んで送り出してくれた。車椅子から何度も転んで怪我しても、私の講座を楽しみに復活して味のある作品を書いてくれた90代の愛弟子が、別れの時私に言った。「先生の新しい船出ですね。」
先生と呼ばれるのは自分にそぐわないが、この時は悪くないと思えた。人生の大先輩から先生と呼んでいただける機会が誰にもあるわけではないし。
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 愛弟子の言った通り、確かに現在は数年前と違う日々を送っている。

 最近預かっている子は、兄と弟が生まれつき障がいを持っており、更にママが闘病中。まだ5歳とは思えないくらいしっかりしている少女なので、始めは驚いたが、転んだりした時などに赤ちゃん返りをしてしまうことがわかった。本当は甘えたい気持ちが爆発してしまうのだろう。だっこ、だっことただ泣いてしまい、普段の気丈さはどこへやらという状態になってしまう。抱いて歩いたら重すぎて翌日腰痛になった。以来やたら甘えてくるようになり、迷ったが「抱っこは無理!」とハッキリ伝えたら、納得してヒザに坐って来るようになった。話せばわかる落ち着いた子。ママが対話を大切に育てたのを感じる子どもである。

 手をつないで歩くとき、彼女はいつもポニョの歌をうたう。なぜだろうと考えて、そういや似ていることを発見。本人は「ずっと前からパパやママに言われてるもん。」と当たり前のように言った。
ポニョは映画館で観たけどもう忘れたちゃったな~と笑うと「もう一回観た方がいい!」と彼女が言った。「あのお話を忘れちゃってるなら、もう一度観て。」と妙に真面目な顔をした。
 夫がある日「ポニョは観たことないな」とDVDを再生したので、私も一緒に観た。すると、津波に飲み込まれる町、避難する人たち、大漁旗、家族を探す船、今どれも身近な現実と感じている自分が、映画館で観た数年前は遠い物語としか感じられていなかったことが分かった。そして今度は、どこか呑気だった過去を遠く感じた。
 後日、彼女に「ポニョ見たよ」と言うと、嬉しそうな顔をした。
「どうだった?」と聞かれ、つい「ポニョのお母さんて大きいんだね。」と口に出してから、失敗した!と思った。でも彼女は「そうだよ!ポニョのお母さんはすっごくおっきーいんだよね!」と更に嬉しそうに言った。彼女の中で、何ヶ月も会えないママが大きく大きくなっているのだろうと感じた。
私が勝手に登録したボランティアだが、少女が来る日は家族も協力してくれるようになった。既に成人した息子も「お兄さん」と慕われ一緒に遊んでくれている。
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皆で、どうか彼女とママが早く会えますようにと、心の底から願っている。(Y)
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by mokelembembe | 2015-07-11 09:21


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