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モケレンベンベ・プロジェクト
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下町ダウンタウン

 『魔法の森』大阪公演は、お客様の数が目標の半分で赤字だったけど、実は大した痛手ではありません。身の丈にあった、シンプルなやり方でやっているので、なるべく経費がかからない工夫をしています。収入のことをちょいと横に置けば、あとは全部大満足!!の大阪公演でした。

 昨年、ユニットを組むにあたってフサヨさんと初めてじっくり話した時、最初の話題が「じゃりんこチエ」だった。普段関西弁で話さないフサヨさんが大阪出身と知って、(20年以上も前から知り合いではあったが個人的なことを紹介しあう機会もなかったので)驚いた私に「なんたってあたし、じゃりんこチエだも~ん!」とフサヨさんは元気に笑った。

 私は3年前に阪堺電車で公演した時、チンチン電車の発着駅だからか?天王寺周辺の雰囲気が自分の住んでる三ノ輪によく似ていると感じた。
その瞬間「昔、劇団の演出家が『じゃりんこチエ』を演ろう!と言ったことがあったけど、それはこういう街の暮らしを私が知っているからだったのか!」と、ふと気がついた。
帰ったら先輩(演出家)に会って、どんなプランだったのか聞いてみようかな!と思っていたが、全国ツアーを終え東京に戻ると、先輩は末期ガンで会話もできなくなっていた。写真を見せ旅の報告はしたが、入り組んだ話など既に出来なかった。手を伸ばしてくれて、しっかりお別れの握手をした。

 後で、先輩は下町大空襲の火の中を家族と逃げた少年だったと知った。下町の同郷とも言える先輩が『じゃりんこチエ』の芝居を作ろうと言ったのは、ふざけた考えではなかったのではないか?と強く思った。
今更ながら読んでみて「戦後の下町を描いた、意外と真面目な漫画なんだ」と知り、聞く耳をもたなかったことを後悔し、空の先輩に詫びた。

 電車の公演でも窓口を担って下さった松本工房さんから紹介されたお店、can tutku(ジャントゥトゥクー)は花園町にある。お店に入った瞬間「魔法の森にピッタリ!」と思った。お店の人たちも「大阪以外の人たちに貸し出すのは初めて。素のまま空間を生かしてくれるというのも望ましい。」と歓迎して応援して下さった。彼らもお店を稽古場にしてバリバリ演劇をやってる人達らしく、さっさと色々手伝って下さり本当にありがたかった。

 大阪に出かける数日前、フサヨさんが稽古にやって来て「私の生まれた西萩町ってのはさ、地名変更でもうなくなっちゃってるし、3歳までしかいなかったから覚えてもいないけどさ、何と!花園町ってのがまさにその西萩町なんだってさ!」とのこと。まったく本当に驚くべきご縁である。
そりゃあもう、きっと面白いことが起きるに決まってるよね~!?と大はしゃぎで大阪へ行った。

 ・・・ところが、まず第1回目の公演中、フサヨさんのスカートが落ちた。ファスナーの上げ忘れというささいなミスだったが、レズリーがいつになく挙動不審の動きをするので、クリストファー・ロビンとしても戸惑った。お客様にも事の次第がわかって、まあ大事に至らず笑顔で終演。ほっとした。

・・・が、そのあと晩の宿舎の鍵を受け取りに駅の向こうの「玉出」(パチンコ屋ではなくスーパー)へ出かけた辺りから、フサヨさんの様子がおかしくなってきた。

周りを行き交うのは、明らかに日雇いのおっちゃん達。酒や小便の臭い。車椅子の老人など。
「ヤンヤンというスタッフと待ち合わせ。」の約束。ヤンヤンてヤクザ?山田のヤンヤン?などと予想していたが、現れたのは小太りの穏やかな男性。少し日本語がたどたどしかったので、外国籍だろう。ヤンヤンは本名だったんだ!?ゲストハウスに案内してくれる道道、ヤンヤンは片足を引きずって歩いている。それを後ろからジーッと見つめているフサヨさんが、どんどん真剣な顔になっていくのがわかった。(先日ケガしました。とヤンヤン本人が言っていたが。)

 ゲストハウスは予想通り、レトロを通り越したような雰囲気。築60年以上とかそんな感じ。(もっとかな)私はここを見つけたとき、不潔でさえなければフサヨさんは「芝居のセットみたいだね!」と喜ぶと思っていた。しかし「清潔にはしてあるね。」と言っただけで、フサヨさんはますますテンションが下がって行った。

再び日雇いのおっさん達とすれ違い、夜の公演準備に取り掛かったが、小道具の留め具が突然ボキッと折れたり(プラスチック製なのでさすがに老朽化したのだろう)、あれがない!これがない!といつになくパニクっているフサヨさん。「西成マジックだよ~。怖いよ~。落ち着け~。落ち着け~。」と言いつつ落ち着きを欠いていた。

 夜の公演は慎重に演じたからか?妙に落ち着いた雰囲気で終わり、フサヨさんの親戚や幼い頃住んでいた団地のご近所さん方と飲んで色々お話した。
 その夜中、ゲストハウスで裸電球(懐かしい!)をつけたまま、フサヨさんは話し続けた。自分が「じゃりんこチエと同じ西成の生まれだと言いふらして家族に叱られたこと。今日その意味がやっとわかった。この街の裏側に悲しいこともたくさんあるんだろうなということが、風に当たって、体の芯がブルブル震えてどうにもならなかった。頭の記憶には無いけど、この古い建物とか見てDNAが感じてしまったんだろうね。ああ、いくつになってもわからないことばかりだと、教えられたんだろう・・・」

 私は襲ってくる眠気と闘いながら相槌を打った。「じゃりんこチエ」の街の話は人ごとではないからだ。翌朝、かっこいい二人のジジイがやっている喫茶店で280円のモーニングを食し(あまりに旨いコーヒーだったので一同おかわり!)、周辺を1時間も散歩した。
釜ヶ崎と呼ばれる辺りには日曜ということもあり、おっちゃん達が溢れ、拾ってきたような物を道傍に並べて売っていた。フサヨさんはまた怖がって「もう自分がどういう所で生まれたのかわかった。もう帰ろうよ。」と不安そうに言った。「みんな一緒にいるんだから大丈夫ですよ!」と、私はお姉さんのようになだめた。

 フサヨさんは本当に私より一回りも年上とは思えない。この可愛らしさが表現に生きているのだろう。
千秋楽は味わうように演じて終わった。
現実の「じゃりんこチエ」の街は想像してたより怖く感じたけど、フサヨさんは行けて良かった!と喜んでいた。

『魔法の森』を観た人の感想に「現実や過去、空想の狭間で夢を観たような気持ちになった。」というのが多い。私達自身も、この作品と旅をする中で時間旅行も楽しんでいる。(Y)
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by mokelembembe | 2013-05-23 17:21


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