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hotcafe ほっぺた館


モケレンベンベ・プロジェクト
by mokelembembe
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月の光と遊ぶすすきのおしゃべり

 なぜ細々とでもン十年も演劇活動なんぞを続けてきた輩が、アイヌモシリに渡って「ほっぺたやき」なんて物を作っているんだい?と、別に聞かれてはいないけれど。たまにしか書かないブログを、読んでますよ!と言って下さる方もあり反省して、今回はそこんとこを書いてみようと思います。
 モケレンベンベプロジェクトでアイヌを題材とした劇づくりに参加してくれたメンバーの中に、サズ奏者のFuji さんがいた。最初はアイヌウタリの知り合いもなかったので手探り、学校で教わらなかった歴史やアイヌ民族についての資料をシェアしたり、歌や踊りを真似してみたりしていた。そのうち彼が「アイヌ民族の料理を食べないと何もわからん!」と言い出した。料理?
唐突に思えた突然の発言だったが、音楽だけでなくトルコの人達と交流してきたFuji さんの言うことには、深い意味があるのだろうと探してみたら、東京に「レラチセ」というお店が一軒見つかった。早速メンバー揃って初めてのアイヌ料理を食べに行き、素朴な味に一同感動した。稽古の後にまた行きたいと盛り上がるも、皮肉なことにその後間もなく閉店してしまった。
 アイヌの劇づくりは何度かの試演会を重ねて本公演『流光の音をたどれ』を行うことになった。写真家の宇井眞紀子さんに弓野惠子さんを紹介して頂きお話を聞くと、若い頃アイヌに生まれたことが嫌になり、北海道を飛び出して関東で長らく暮らしていらしたが、ある時目覚め離れていた時間を取り戻すかのように学び直し、現在ではアイヌ文化アドバイザーとして御活躍されている。その、自分はアイヌだ!と再び目覚めたきっかけが、素朴なアイヌ料理を口にした瞬間だった!と聞かせてもらったことでFuji さんの言ったことを理解した。言語、音楽、踊りや着物などと同様に 食べ物は民族の大きな文化であると改めて深く。
 アイヌの劇づくりを先頭切って取り組んだ私は、途中で自分自身が何者なのかを知りたくなった。戸籍を取り寄せたが役所には80年前までのものしか保存はされておらず、両親を伴って先祖の暮らした土地の古い寺や親戚の家を訪ねて話を聞いて回った。そこまでしても結局アイヌ民族との縁などはわからなかったが、私にとっては先祖や歴史と繋がった濃厚な旅であり、それまで把握出来なかった自分のアイデンティティみたいなものが、理屈なしに掴めた感じがした。父方の長野、母方の富山、そしてまた長野と往復し、旅の道中何度か両親とおやきを食べた。父が「お袋が作ってくれたおやきは、こんなパンみたいな皮じゃないんだ。本物のおやきが食べたいな。」と言うので、帰りに善光寺近くの有名店に寄り、炭焼きおやきを食べた。おやきは縄文から続くソウルフード。先祖を辿る旅と共に記憶された。
 翌年、原爆が落ちた時に電車を運転した女学生を描いた『桃の実』全国公演を成功させ、その翌年は東日本大震災が起きたが、『桃の実』現役高校生公演、アイヌの劇公演第2弾『流光の風をたどれ』と目まぐるしく活動した。今度は新しくアイヌ料理をいただける『ハルコロ』というお店が出来たので、またFujiさんと一緒に駆けつけた。お店のお母さんが歓迎して下さり、見ず知らずの私達なのにイモシトの作り方を親切に教えてくれた。また皆でハルコロに行って公演の打ち上げをしようと予定した日に、お店のお母さんが亡くなられたと聞き愕然とした。お店の前にそっと花を、感謝と共に手向けてきた。
 それから間もなく、世界を知らなかった私は広島と長崎の被爆者の方々に勧められた地球一周の船に乗った。色々な人と色々な対話を重ねた海の上で、これから先何をしようかと考えた。
 
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 もっと人間らしく生きたいと思った。都会生まれでわからないことばかり。火を起こして料理が出来るようになりたい。もっと命を大切にしたいと思った。自分も他人も大切な価値ある命。この世は弱肉強食なんかじゃなく、自然災害が増えている中で助けあわなければ。などと考えた時にふと、そうだ、おやきを作ろう!と浮かんだのだ。
 しかし帰国して橋本フサヨさんとの二人芝居『魔法の森』を続けた合間に作ってみても、なかなか上手くいかなかった。友達の店の片隅で1か月売ってみたけど、修行が足りなかった。間もなく友達も店を閉店。片付けを手伝うと、長年愛用活躍した調理道具や食器を譲ってくれた。あたしゃ、本気でやるよ!また両親と夫と長野に、今度はおやき修行の旅へ出た。それから千葉の君津で半兵衛炭焼塾も受講した。炭焼き釜に木の枝を投げ入れていた私達に、塾長の木曽野さんが「火を怖がらないで。」と何度も言った。そのうち、アイヌはまずアペフチカムイ(火のおばあさん)に語りかけるんだっけ、と思い出したら怖くなくなった。
そして昨年末アイヌモシリへ移住。雪の日も古家の修理の合間に研究した。長野で習った製法は真似出来ないやり方だし、私が目指す味とも少し違う。そもそもおやきの作り方は各地域や家庭で違うそうで正解はなく、オリジナル製法を編み出すしかなかった。大工さん達にも試食して頂き「美味しい!珍しいし、これ売れますよ。」と言われた時にやっと自信がついた。
 とうとうhot cafe にてほっぺたやきを皆様に食べていただけることになったこの秋。北海道ではあまり馴染みのないらしいおかずが入ったおやき、膨張材を入れない歯応えのある皮のおやきは、なんとか好評。やったぜベイビー!
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またほとんどの食材が地元のもので賄えることに感動している。
夢のオフグリットは実現出来てないが、ほっぺた館にガスを引いてないことには結構驚かれる。でも「炭火焼き」を売りにしていないのは、カセットコンロや電気オーブンにも助けて貰っていることもあるし、何より炭で料理するのがもう日常になってしまったからである。炭調理は時間がかかるが、何でもすごく美味しくなる。
演劇からたくさんの出会いが繋がって、カフェ。アイヌモシリの大空の下、少しは人間らしく成長しているのだろうか。(Y)
by mokelembembe | 2016-09-19 23:58
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